「スタンド・バイ・ミー」

スティーヴン・キングの「スタンド・バイ・ミー」:私は映画でも小説でも心が愛する作品と頭が愛する作品がありまして、どちらも私にとっては必要で、本作は映画も小説も、心が愛する作品です。きっかけは映画です。公開当時の大昔、映画館で観てリヴァー・フェニックスにノックアウトされました。凄い子役だな、そして彼が演じるクリスの大人っぽさ、スター的存在であった兄の死後、落胆する両親に、特に父親に複雑な気持ちを抱いているゴーディを気遣うクリスがとても印象的でした。その後数十年が流れ、改めて映画を観て、原作を初めて読んで、心がこのお話を好きだ、と叫びました。というわけで、がんばって書いてみようと思います。
このお話は後年小説家となったゴーディの回想という形式で書かれています。12歳の夏、四人の少年は、隠れ家的な樹上ハウスでいつもつるんでいます。ゲームをしたり、タバコを吸ったり、ヌード雑誌を見たり・・・そんなある日、太っちょのバーンが駆け込んできて言いました「おまえたち、死体を見に行きたかないか?」。バーンの兄ビリーが悪仲間と、現在行方不明中の少年が列車に轢かれて死んでいるのを見つけてしまった、と話しているのを立ち聞きしたのです。でも兄たちは町の不良なので警察に届けるつもりはないみたい。
4人は出発します。いつもつるんで悪ふざけばかりしているようでも、皆それぞれに事情を抱えています。無鉄砲で激しやすい少年テディは父親を敬愛しています。彼の父は第二次大戦で活躍しましたが、戦争神経症を患っていて、幼児のテディの耳をレンジの火で焼きました。それでもテディは父親の悪口を許せません。仲間内で一番トロいバーンは、乱暴者の兄を憎んでいます。クリスは頭がいいのに、アル中の父と、札付きの不良の兄たちがいて、決して正当に評価されてはいません。ゴーディも、一家の花形だった兄の死後、彼を顧みない両親の元、自分は「見えないこども」だと感じています。
この小説の中で一番心を打たれる場面は、物語の中盤、クリスとゴーディの二人が、今後の進路について語り合うところです。今後も仲間たちと一緒にいたいというゴーディに、クリスはカレッジ・コースに行くように説得します。ゴーディは自作のお話をよく仲間たちに紹介していたので、クリスはゴーディの文才をよくわかっていました。そしてゴーディの家庭の現状も。
「おれがおまえのおやじだったら、おまえだって、あほくさい職業訓練コースをとるなんて話、持ち出さなくてもすむのにな!あんな作品をいっぱい作れるなにかを与えてくれた神様みたいに、こう言ってやれるんだ。〝これこそ、わたしたちがおまえに望むことだよ、息子や、その才能を失わないようにしなさい〟ってね」
そして、クリスが盗んだとされているミルクの代金の真相について打ち明けます。クリスは自分がいいとこの子だったら、こんな結果にならなかったのにと話して泣きそうになりました。
この夏以来、かれら4人で遊ぶことはなくなっていき。クリスもカレッジ・コースを選び、メイン州立大学の法学部に進学します。
このお話の冒険部分について全然触れませんでしたが、もちろん心躍る場面や、手に汗握る場面もあり、そちらも十分に楽しめる作品です。映画ももちろん見てください。残念ながら早逝してしまったリヴァー・フェニックスの名演技をぜひ味わってください。
作者スティーヴン・キングは作家生活50年、今なお創作活動は衰えず、最近の作品も高い評価を受け続けています。私も読んでみたい作品がいくつかあります。いつか読めたら紹介したいですが、さていつになることやら。
お休みなさい。2024/8/9