「子供の眼」

こんばんは!
リチャード・ノース・パタースンの「子供の眼」:クズ男、好きですか?小説を読んでいると色々嫌な奴が出てきますが、私がキング・オブ・クズ男だと思うのは、本作に出てくるリッチー・エイリアス。本気で「最低クズ野郎」の称号を捧げます。
本作は続編ですので、もしお読みになる場合は前作「罪の段階」から読むのがお勧めです。事件自体は独立していますが、人間模様を味わうならやはり前作からだと思いますし、前作、傑作なんですよ。読んで損なし!
さて、今回のヒロインは、クリスの法律事務所のスタッフ、弁護士のテリ。彼女の夫がリッチーで、二人にはエリナという5歳の娘がいます。リッチーが殺されるところから物語は始まり、その後テリとリッチーの破綻しかけている夫婦関係が語られていくという形です。リッチーも弁護士ですが、仕事が続かず、現在はエリナの養育のため家庭を守っているそうです。簡単に言えばヒモ亭主です。しかもこのヒモ亭主、すっかりリッチーに嫌気がさして離婚したがっている妻からエリナの親権を奪い取り、養育費としてテリの収入の60%をせしめるつもりでいろいろ画策しているのです。ね、クズ男でしょ。テリはエレナを連れて家を出ます。そしてクリスの家に行き、リッチーと別居したことを報告します。この二人は、前作の裁判で一緒に戦ったことがきっかけで、精神的に強いきずなで結ばれるようになりました。お互いに相手に愛情を抱いていますが、クリスはテリに言います。「わたしは45歳だ。十代の息子がいる。きみは29歳で、夫と別居したばかり。アメリカじゅうのどのカウンセラーも、おやめなさいと言うだろうな」。そうは言ってもクリスの愛情を感じたテリは、満たされた気持ちでクリスの家を出ますが、そこで待ち伏せしていたリッチーに出会います。本当にいやな男です。リッチーはテリに離婚の申し立て書類を渡しました。
いよいよ離婚に向けて事態が動き始めました。争点はエリナの監護権がどちらのものになるか。テリにとってもリッチーにとっても絶対に負けられない戦いです。私たち読者は、リッチーが殺されることを知っています。だから裁判がどう動こうとテリがエリナを失うことはないとわかっていますが、それでもリッチーの狡猾さには腹が立って仕方がない。怒り心頭だったもので、誰が犯人か全く考えていませんでした。でもそこが作者の力量の高さだとつくづく思いました。結果が見えているのに読者を引きずり回すんですよ。凄すぎました。
さて、前作「罪の段階」で判事を務め、今回の「子供の眼」で弁護士として活躍したキャロライン・マスターズ。彼女のファンになったなら、「最後の審判」をぜひお読みください。もうこれも傑作なんです。
お休みなさい。2023.11.22