「深夜プラス1」

こんばんは!
ギャビン・ライアルの「深夜プラス1」:1965年の作品です。ケインが依頼された仕事の内容は、実業家マガンハルトをブルターニュからリヒテンシュタインまで送り届けること、ただし、マガンハルトはフランス警察に追われているうえに殺し屋に命を狙われている、しかも定刻までに目的地に着く必要がある。問題だらけです。ケインはこの絶対に断った方がいい依頼を引き受けますが、優秀なガンマンを要求します。選ばれたのはハーヴェイ。腕はいいらしいが、問題が発覚します。アル中なんですよ、困ったもんです。任務が終わるまで飲むなよ、ケインは厳命します。マガンハルトだけ運べばいいと思っていた二人ですが、マガンハルトは秘書のミス・ジャーマンも連れていました。お荷物が増えた?いえいえ、彼女はできる女性でした。この命懸けの状況で役に立つんです。途中銃撃戦もあり、超一流の殺し屋が襲ってくるので本当にマガンハルトが命を狙われているのがわかるのですが、ケインにはいまいち理由がピンと来ない。なぜ?もちろん読者の方も同じ疑問を抱きながら読み続けることになります。マガンハルト本人も自分が命を狙われる理由がわからないので危機感が足りない様子。最初の予定では、マガンハルトのシトロエンで行くはずでしたが、襲撃で壊れてしまい、ケインは元恋人の助力を仰ぐことを決断します。本当は気が進まないけれど。
読み始める前は、スピード感あふれるかっこいい冒険活劇かな、と思っていましたが、実際はもう若くないケインとハーヴェイの人生の渋さ、存在感、哀愁を味わいながら読む小説でした。物語はケインの一人称で語られ、内省的な印象を与えますが、銃撃戦は迫力満点だし、ケインとハーヴェイの武器談義や、それぞれの仕事に対する真摯な思いなど、男のロマンを感じさせる部分もあり、読み応えたっぷりでした。
終に敵をやっつけた後の二人の会話が好きなんですが、引用してもいいでしょうか?

 

「戦いにどうやら勝ったらしいな」とハーヴェイが言った。感覚を失ったような無表情な声であった。
「そうだな」と答えて、私をなじる辛辣な言葉を待った。
彼は、「一杯飲みたいよ」と言っただけだった。
「おれも」

 

これぞハードボイルド?お休みなさい。2024/6/11