「九マイルは遠すぎる」

こんばんは!
ハリイ・ケメルマンの「九マイルは遠すぎる」:これは短編集ですがどちらかと言うと連作かな、と思います。語り手は、元法学部の教授で現在は郡検事の「わたし」です。立場上警察から報告書がきます。探偵役はニッキイ・ウェルト、英文学の教授です。この二人が事件について語り合うと言う作りです。ジャンルとしては安楽椅子探偵物に分類されるみたいで、表題作の「九マイルは遠すぎる」の初出は1947年の「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」ですので古典ミステリーと言えそうです。「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」の功績は、小森収氏編集の「短編ミステリの二百年vol.3」に詳しいのでもしご興味があればぜひお読みください。とっても分厚い本ですが当時の名短編が読めます。私はとても面白く読みました。好きな短編が何作かありました。
ニッキイは英文学教授ですからもちろん捜査をするわけではなく、「わたし」の元に届く資料から推論を組み立てて真相に迫っていきます。二つ例を挙げますと、「わらの男」では脅迫状に付いていた指紋を警察は犯人がうっかりミスで付いたと考えますが、ニッキーはわざと犯人が付けたものだと喝破します。「おしゃべり湯沸し」では学会で知り合った学者がお湯を沸かしていたことから、コインロッカーの鍵を盗み出そうとしていると見抜きます。ほんとですか?
この短編自体も面白いと思いましたが、この作者の長編についても解説で触れられていて、ユダヤ教のラヴィについて書いた作品があるそうです。多分宗教上の指導者のお話かな、と思います。私が海外文学ばかり読むのは自分が知らない文化を読みたいからですので、入手しにくそうですがいずれは読めたらと思いました。
お休みなさい。2024/12/25