「依頼人」

こんばんは!
ジョン・グリシャムの「依頼人」:映画も原作も大好きです。主人公は11歳のマーク。弟リッキーとともに森へ行った彼は、一台の車が停車し、降りてきた男がゴムホースを排気管に突っ込み、もう一方の端を車に引き込むのを目撃します。この男自殺する気だ!リッキーは怯えますが、マークはなんとか助けようと思い、ホースをはずす。それに気が付いた車中の男はマークを車中に押し込んで恐るべき秘密を明かします。男が意識を失った隙を見て、マークは脱出しました。男は結局拳銃自殺しました。
映画でマークを演じた子役はブラッド・レンフロ、とても素晴らしかったですが、若くして薬物の過剰摂取で亡くなりました。うーんヘロインかあ。マークのパートナーとなる弁護士レジー・ラブ役のスーザン・サランドン、よかったなあ。まあそれはさておき、小説に戻ります。
自殺した男、弁護士ジェローム・クリフォードは、上院議員ボイド・ボイエットを殺害したバリー・マルダーノというマフィアの弁護を担当していました。彼がマークに明かした秘密は、ボイエットの死体の隠し場所。FBIが必死で探しているボイエットの死体。マークは厳しい尋問を受けますが、決して口を割りませんでした。マフィアの報復を恐れているから。自分と家族の命を守りたい。
彼は自分には弁護士が必要だと思い、52歳の女性弁護士レジー・ラブを雇います。マークが払ったのはたった1ドル。レジーは虐待された子供の事件を主に手掛けている弁護士で、マークの話に真摯に耳を傾けます。マークは死体の隠し場所以外はすべて真実を語ります。ここから二人の友情が始まります。
ジーは以前高名な医師の妻でしたが、夫には若い愛人ができ、泥沼の離婚訴訟が始まりました。レジーは傷つき、アルコールや薬物に依存するようになります。そして、二人の子供との接見も禁止されてしまいます。一方マークもDV男だった父親と母親の離婚訴訟を経験しています。年齢の割に大人っぽく自立しているのはその影響かもしれません。
ジーは離婚後依存症を克服し、弁護士になり、子供たちの味方として生きるようになります。このエピソードは感動的だと思うのです。彼女の夫は高名な医師である自分の社会的地位と圧倒的な財力でレジーを痛めつけたわけですが、レジーは自分の子供にも会えない生活を受け入れ、違う土俵で生きることを選び努力を重ねました。裕福な医師の妻から子供たちのために働く弁護士へ。悔しかっただろうな、どんなに恨みつらみがあっただろうと思いますが、彼女は新しく生き直すことを選択しました。
二人ともつらい過去に囚われずに生きるという選択をしました。マークはレジーを信頼しているんですけど、自分の意志でこの事件を解決しようとし、レジーは半ばマークに引きずられるように振り回されます。マークの落とし前のつけ方にどうぞハラハラドキドキしてください。
この小説では、証人保護プログラムが取り上げられています。解説によると、「もともとマフィア内部の裏切り者とその家族を保護して証言を引き出し、それによって組織犯罪を潰滅に追い込むためのもの」だそうです。マークは最後にこのプラグラムを受け入れますが、これがせつない。映画でも小説でも。
お休みなさい。2024/8/30