「猫は14の謎をもつ」

こんばんは!
リリアン・J・ブラウンの「猫は14の謎をもつ」。ブラウンはシャム猫ココシリーズで有名です。猫コージーとしては大変な長寿シリーズで愛読されている方もいると思いますが、本作はココシリーズとは無関係の短編集で14作収録されています。
1作目「猫は神経を集中する」の冒頭の1文がこれ。「生まれてまもなく、ファット・ファットは人間が下等な種族であることを悟った」。来た!高慢系シャム猫。ココシリーズでは、ココを始め猫の内面描写はなく擬人化度低めですが、この短編集では必ずしもそうではありません。ファット・ファットの高慢ぶりを紹介します。いかに自分が飼い主を教育しているか偉そうに語ります。「ディナーの時間になるといつも、ファット・ファットは部屋の隅に座り、精神集中をしてテレパシーを送る。すると突然、あたかも自分たちで思いついたかのように、彼らはこういうのだった。『猫にエサをやる時間だ』」。実際猫に飼いならされていると感じている飼い主さんは少なくはないと思っています。小さな悪魔に翻弄されるのもまた楽しい。
でも!猫ごときに飼いならされてたまるか、という方にもお勧めの作品があります。2作目の「大きな水たまりが現れた週末」は、濡れ衣を着せられたパーシーのお話です。パーシーはお利口でお行儀がいい猫です。飼い主さんを困らせるようないたずらなど決してしません。飼い主さんのお宅にお客が来ます。もちろん、パーシーはいつもと同じでお行儀よく振舞っていますが、夜中に現れた幽霊たちが部屋中を荒らします。残念ながらこのおうちに幽霊がいることを飼い主さんは知らないんですね。翌朝起きてきた人間たちは猫のパーシーの仕業だと誤解します。お行儀がよく賢い猫なのに、思いもよらない濡れ衣に彼はすっかり誇りを傷つけられます。哀れ、パーシー。「パーシーは誇りを傷つけられ、ソファの下の避難所から出ようとせず、朝食すら食べようとしなかった」。
でも殺人事件も必要では?と思う方にもお勧めのお話があります。「マダム・フロイの罪」なんてどうでしょう?人間の被害者は猫嫌いなので、マダム・フロイ(猫です)の息子を転落死させます。クソ野郎ですね(失礼!)。猫のマダム・フロイは息子を殺したクソ野郎に(またまた失礼!)見事に復讐を果たしました。同じように転落死させます。猫が殺人犯です。でも猫が死んでしまう話なので読後感がいいかと言われると微妙かもしれません。天晴れ、マダム・フロイだけど、猫が虐待される話はつらかった。
さて、人間が無残に殺される話を平気で毎日読んでいるくせに、動物が死ぬ話は嫌いだ、というミステリーファンは意外といます。あなたはどう思われますか?
お休みなさい。2024/5/28