「死刑台のエレベーター」

ノエル・カレフの「死刑台のエレベーター」;題だけで連想したのはスティーブン・キングの「グリーン・マイル」みたいな死刑囚の話かな、と思いきや主人公のジュリアンが物語の2/3は文字通りエレベーターにただただ閉じ込められて懊悩しているお話でした。
ではあらすじを紹介したいと思います。彼はお金と女性にだらしないらしく、お金に困っていますが、債権者の高利貸しを自殺に見せかけて殺すことに成功します。秘書をアリバイの証人に仕立て上げたし、練り上げた完全犯罪は成し遂げたという満足感に浸りながら帰宅しようとしたその時、忘れ物に気が付きました。犯行の証拠になりかねない忘れ物です。慌てて戻ろうとしたジュリアンはエレベーターに乗り込みますが、週末なので管理人がエレベーターの電源を切ってしまい、エレベーターに閉じ込められてしまいます。次にエレベーターが動くのは36時間後。その間に彼の車を盗んだカップルがジュリアンがエレベーターに閉じ込められていた間に殺人事件を引き起こしました。やっとエレベーターから出られたものの、自分とは無関係な事件の容疑者になってしまいました。ジュリアンにはアリバイがありません。だってエレベーターにいたんだもん。そして彼はエレベーターにいた事実を明かすことができません。だって、高利貸しを殺した件がばれるかもしれないから。これね、高利貸しを殺した件の嫌疑はかけられていなかったので、素直にエレベーターに閉じ込められていた、と言えば良かったかもしれません。でもこのお話の怖いところは自分が犯した本当の犯罪で弾劾されることはなかったのに、自分が与り知らない犯罪で多分死刑になる。そういうところだと思います。一度疑われてしまうと、嫌疑を晴らすことが難しい。私は一度職場で鍵が紛失した時に疑われたことがあります。どうしても私を犯人だと思いたい人がいたから、たったそれだけの理由で、私は何度も尋問されました。何年も鍵を扱う仕事をしていて一度も紛失したことがなく、「現在の業務でその紛失した鍵を使用する必要がないので触っていません」と答えましたが。本当にしつこかったですね。まあ、たかだか鍵だし、無実は証明されましたが。
バイアスの怖さを思う存分味わってください。でもジュリアン、人殺しだしね。同情できるわけではありませんが。
お休みなさい。2024/1/10