「短編ミステリの二百年2」

こんばんは!
小森収編の「短編ミステリの二百年2」:この本は6作完結ですでに6作刊行済みで私は3作目まで読んでいます。3作目についてはこのブログでちょっと書いています。基本的な構成は最初に実際に書かれた短編が紹介され、残り3~4割ぐらいが小森先生の評論です。評論部分も一生懸命読みましたが正直難しい。収録されている作品は主に第二次世界大戦の前の時代のものだと思います。紹介されている作品で感想を書きたいものが二つありますので、ちょっと書いてみようと思います。
一つ目ははロイ・ヴィカーズの「二重像」です。犯人は生後間もなく亡くなった双子の弟を利用します。弟が本当は生きていて、自分の生活を脅かしていると主張します。おじを殺したのもその弟だ、と。担当した警官は狂言だと思いますが、証拠がない。富豪のおじを殺して相続寸前.、このまま完全犯罪成立か?と思われたときに、意外な人物から動かぬ物証がもたらされます。少しほろ苦い結末です。その人物は犯人の妻で、彼女は自分が警官に渡したものが夫の犯行を裏付ける証拠だとは微塵も思っていない。彼女に対応した警官は、「彼女が受けるにちがいない衝撃をやわらげるすべを自分は持ちあわせていないのだ、と胸の内でつぶやきながら」受け取りました。たぶん彼女は後日このことを知る。この小説はそこまで描いてはいませんが、読者もこの警官と同じように、妻の今後を思うと胸の痛みを覚えながら読み終わる、そういうお話でした(ネタバレ気味ですね。ごめんなさい)。
二つ目は、フランク・グルーバーの「死のストライキ」です。工場の従業員が平和的な座り込みストライキをする予定で、十分な食糧も用意し、娯楽室で遊びながら気楽に過ごしています。ところが役員の死体が見つかります・・・誰かに殺されたらしい。どうしよう?平和的なストライキのはずがこの中に殺人者がいる・・・警察に連絡すれば用意周到だったストライキが破綻する。とりあえずこの死体は隠しちゃえ。でもさらなる犠牲者が・・・このストライキは当初の予定とは全く違う様相を呈し始めました。そこに絡むのがたまたま講演に招かれたオリヴァー・クエイド。唐突に始まったストライキと殺人事件に見事に巻き込まれてしまいました。「人間百科事典」を自他ともに認める才人という設定で、この人物がこのお話の探偵役を務めることになります。このお話は話が思わぬ方向に転がる展開が面白く、読み応えがありました。作者グルーバーはこのオリヴァー・クエイドものを何作も書いているそうですが、編者小森さんによると、この「死のストライキ」が一番面白いそうです。
このシリーズは、1冊600ページを越える上に後半は評論ですから読むのが大変ですが、6作目までコンプリートする予定です。
お休みなさい。2024/4/21