「クラーク・アンド・ディヴィジョン」

こんばんは!
平原直美の「クラーク・アンド・ディヴィジョン」:作者名は漢字ですが、作者は日系3世のアメリカ人で、原作は英語で翻訳ミステリーです。今月末に行われる西東京読書会の課題本です。当日は翻訳者の先生がゲストでいらっしゃるので、もう一作「ヒロシマ・ボーイ」も読みたいと思っていますが、現在ブックオフで発送準備中で間に合うかどうか微妙です。間に合うといいな。
物語の語り手は、アキ・イトウ、日系2世です。彼女の家族は両親と姉ローズ。カリフォルニアで暮らしていました。父は青果卸店の店長で、暮らし向きは中流家庭といった感じでしょうか。でも1941年、日本軍による真珠湾攻撃によりアメリカの日系人の生活はアキの家庭を含めて一転します。日系人は収容所に移転させられることになりました。これまで築いてきたものを失ってしまいました。収容所でのプライバシーのない厳しい生活。でももう一度普通の市民生活を取り戻すチャンスが訪れます。1943年の春、「アメリカ政府は国家に忠誠を誓う忠実なニセイについては、収容所から解放」することにしました。ただし、元の家に戻れるわけではなく、見知らぬ土地に移住するしかありません。進取の気概に富む姉ローズがまず一人でシカゴに旅立ちます。その後一家で住める環境を整えたローズの元に、アキと両親はまた家族で住める、ローズに会える、と期待して旅立ちますが、シカゴに着いた家族にもたらされたのは、前日に地下鉄の駅、クラーク・アンド・ディヴィジョンで、ローズが列車に飛び込んで自殺したという信じられない知らせです。
アキは検視局に赴き、検視官からローズが最近妊娠中絶をしていたというさらに信じられない事実を告げられます。あの姉が?いつも颯爽としていて家族のリーダーだったあの姉が・・・
アキはシカゴでの新しい生活を軌道に乗せるべく努力する一方で、姉の死の真相を知ろうと姉の知人を探しては会いに行き、真相に迫っていきます。時には危ない橋を渡りながら。
当時妊娠中絶は犯罪だったということがポイントでしょうか。まあひどい話だと思いますけどね。出産するかどうか決めるのは、当事者の権利でしょ。巻末には作者がこの時代をもっと知りたい読者のために参考資料を挙げてくれています。
最後に大矢博子先生の解説から。「日系3世として、ジャーナリストとして、そして小説家として、日系アメリカ人のリアルを追い続けてきた平原直美。アメリカで高く評価されている彼女の作品は、日本でこそもっと読まれるべきだと、声を大にして言いたい」。
お休みなさい。2024/8/25