こんばんは!
M・W・クレイブンの「ストーンサークルの殺人」:ポーとティリーのバディシリーズ1作目です。このシリーズは邦訳が4作目まで出ていまして、3作目の「キュレーターの殺人」を激賞している書評を読みました。バディ物と言えば古くはホームズとワトソン、ポアロとヘイスティングス、新しいところではホーソーンとホロヴィッツ、があるかと思いますが、これらは語り手と探偵という組み合わせで、探偵が捜査上優位に立つという図式です。でもポーとティリーはどちらも警察官で、ポーは男性、ティリーは女性です。二人が所属しているのは国家犯罪対策庁の重大犯罪分析課(NCASCA)で、ポーは刑事、ティリーは分析官です。ティリーは天才的な頭脳の持ち主ですが、学問の世界で純粋培養されたせいか不器用で人づきあいが苦手。NCASCAでも「ぼんくらちゃん」と呼ばれてシカトされている感じです。それに気が付いたポーは怒りにかられます。まだティリーと知り合ったばかりで特に友情が芽生えているわけではないのに激怒する。「いじめは絶対に容赦しない」と言い放つポーにクラっとしました。ポー、素敵!社会人生活を営んでいれば平気で人を傷つける、故意に相手の人格をこてんぱんに踏みつける人を見ることもありました。世の中にどれだけの人が実際に病んでしまって苦しんでいるか、心療内科に行くとそういう患者さんがたくさんいます。大人のいじめってカッコ悪いと思うけど。
この連続殺人事件の被害者は皆おじいさんです。切り取られた性器を口に押し込まれて、ストーンサークルで焼き殺されました。どうしてジジイがそんな目に?性的な連続事件の被害者はたいがい女性ですよね。本当に陰惨な殺人事件です。殺害の手口が残酷ですが、ラストでどうしてこの殺害方法が選ばれたのかはわかります。
ティリーはポーに出会う前は職場で独りぼっちで一緒にランチを食べる友達もいなかったので、ポーと捜査をともにするようになってポーというランチ友達を得て喜びます。ポーはそういうティリーの孤独を感じますが、そのことを指摘したり、ティリーの生きづらさを批判したりはしない。ティリーの能力の高さに驚嘆すると同時に、彼女に親近感を抱く。そして物語の終盤で重傷を負ったポーは、見舞いに来たティリーを見たとたんに人目もはばからずに号泣します。そういうところがこのシリーズを愛する読者の琴線に触れるのでしょうか。
4作目の「グレイラットの殺人」は、2024年の翻訳ミステリー読者賞に輝きました。その模様をyoutubeで視聴しまして、私はこのシリーズを読もうと思いました。もう皆さん、ポーとティリーを愛してるんですよ。
お休みなさい。2024/6/21